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3月30日 フライデーのインタビュー①

村井宗明・衆議院災害対策特別委員長が初めて明かした最悪シナリオ 大津波を忘れている!M8首都直下地震「本当の被害予想」





 その時は、突然やってきた。

 ガタガタガタッ! と突き上げるような衝撃に襲われ、テレビや棚が大きな音を立てながら転倒。ガラス類は砕け散り、書類や本が床にブチまけられる。転げ落ちるようにデスクの下に逃げ込んだあなたは慌てて、携帯を取り出すが、いっこうに電話はかからない。ガタガタッ!

 続けざまに来た余震でオフィスの壁掛け時計が落下し、割れた。館内放送によれば、エレベータは復旧の見通しがたたないという。損傷が激しい非常階段を使って、脱出せよという。友達は、家族は無事だろうか。何とか壊れずにすんだテレビを起こし、スイッチをひねると、羽田沖の、爆音とともに燃えさかるコンビナートの模様が映し出されていた。

 と、画面が切り替わり、江東区や北区の荒川流域で多数の建物が倒壊しているとのリポートが。死者・行方不明者多数との声に続いて、速報が入る。

 中野や高円寺、野方の木造住宅密集地で大規模火災が発生しているという。上空を飛ぶ自衛隊機から送られてきたのは、火の海と化した住宅街。道が狭く、消防活動も思うままにならないようだ……。

 余震できしむオフィス内に、東日本大震災以来、トラウマとなっているあの警報音が鳴り響く。余震、そして津波!?  首相が非常事態宣言をしたというが、相変わらず電話は通じない。家族は、友は大丈夫だろうか。福島第一原発は大丈夫なのか、自分はこれからどうすればいいのか――。

 地震リスクが高まっている。  中でも世間の耳目を集めるのが、昨年3月11日に発生した東日本大震災の巨大余震、そして首都直下型地震だろう。

 今年1月、読売新聞が東京大学地震研究所・平田直教授の「M7の(首都直下型)地震が4年以内に70%の確率で発生する」という試算を取り上げ、列島に激震が走ったのは記憶に新しい(後に東大地震研は最新データで再計算し、「4年以内50%以下」と修正)。

 だが、東日本大震災直後より減ったとはいうものの、多い日で20数回もの地震が発生するなど、年明けから地震の回数は増加の一途。余震や首都直下型地震への恐怖は高まるばかりだ。日本は再び巨大地震に襲われるのか。  本誌は国会における災害対策の責任者、民主党の村井宗明・衆議院災害特別対策委員長(38)を直撃。その口から語られたのは、歯に衣着せぬ危機だった。

「首都直下型地震は100%来ます。明日来てもおかしくない。『4年』や『30年』という数字にさほど、意味はありません。95年の阪神大震災をトリガーに、日本は地震活動期に入っているからです。三つの海洋プレートが入り組んでいる南関東は世界で最も地震が多い地帯のひとつ。それでも、関東大震災規模のM8規模の巨大地震は定期的に発生しており、関東大震災(23年)からはまだ猶予があると考えられていました。ですがそれも、見直せざるを得ません。3月8日に東大地震研が発表したように、想定よりも震源が10㎞ほど浅いことが判明したからです。この最新研究により、首都直下型地震と相模トラフとが連動したM8大型地震も想定に入ってきました。いずれも想定震度は最大で7を超えます」

 政府は首都直下型地震の震源地として、都心西部や立川市、羽田など18ヵ所を想定。それぞれで被害予想をシミュレーションしているが、中でも発生確率が高いと見られているのが、東京湾北部が震源だったケースだ。夕方6時、風速15mと仮定した際、建物倒壊によって約3100人(荒川沿いの全壊住宅が顕著だという)、火災によって約6200人と計1万1000人もの死者が見込まれている。重傷者を含む負傷者が21万人、自力脱出困難者が4万3000人も発生。建物やライフライン、交通施設の予想被害額は実に112兆円にものぼるのだ。

 これだけで十分に国家機能は麻痺するが、村井委員長は「この被害予想には重大なポイントが欠けている」という。

「津波です。関東大震災の時は、火災ばかりが注目を浴びていましたが、実は津波も起きていた。神奈川県で6mを記録しているんです。地震によって相模トラフが動けば、津波が発生。角度によりますが、東京湾を遡上し、都心を直撃する可能性があるのです。東京は東北より地下鉄や地下街が発達しており、そこに浸水すると逃げるのはかなり困難です。相模トラフが動く可能性は2%と見られていますが、低いとはいえ想定から外すわけにはいかない」

 東日本大震災を見れば、津波の破壊力は一目瞭然。首都を津波が襲った場合の死者数・被害額は想像を絶する。

 村井委員長が続ける。「実は現行の被害予想は10年前の02年のデータで算出されています。人口も建物も変わっている。その点も考慮すべきです。その他にも、エレベータ被災(停電により震度7で25%、震度6強で20%のエレベータが止まる)、石油コンビナート被災(京葉で4944件、京浜で3653件)、地下街被災(群集殺到)、液状化のリスクも漏れている。日本列島の全体が地震活動期に入っているという前提で被害予測をやり直す必要がある。被害想定のメッシュ(地図のマス目)をこれまでより16倍細かい250㎡単位にして、ピンポイントで火災や倒壊リスクをシミュレーションするのです。スーパーコンピュータ『京』を駆使して、最新の被害想定を来年春までに発表したい」

 すでに見直しは着手されている。「まず、南海トラフにおける津波高と震度分布を、3月から4月にかけて発表します。そして6月にその津波高にあわせた人的・物的被害の想定を公表します。秋にはそれに伴う間接的なものを含めた経済的被害の想定を発表します。名古屋に津波が直撃した場合は地下鉄・地下街が被害を受けるリスクが高い。国民には衝撃が走るかも知れませんが、厳密に精査して公表します。その後、南海トラフの手法(シミュレーションのノウハウ)を使って、首都直下型地震のシミュレーションにかかっていきます」

 特筆すべきは、最新被害予想の見直しが南海トラフ優先で進められていること。首都直下型地震ばかりが着目されているが、東海および四国にも重大な地震リスクがあるのだ。 

村井委員長にその他のリスクについても聞いてみた。まずは地震と連動して起こるのではないかと言われる、富士山の噴火について。「みなさん恐れているようですが、被害額としては2.5兆円程度と予測しています。噴火による火山灰で、人的被害は出ない。灰が降ってくるだけですから。リスクがあるとすれば間接被害。コンピュータは火山灰に弱いためコンピュータの破損による予想外のリスクがありえます。金融系や病院、信号機の制御など、コンピュータ化されたありとあらゆるのシステムの障害が予想されます」

 地震研・平田教授の「4年以内」試算で話題となった短期予測、FM波などを用いた新しい予測についても聞いた。「政府の地震調査研究推進本部では、過去の長期的周期データをもとに分析しているので、平田教授の短期予測は少数説。よって、公式に採用されていません。しかし、平田教授が短期予測に使っているグーテンベルク・リヒター法則はあながち間違いではないと村井宗明氏は思う。短期的な数値を入力してく確率論なんですが、多数説でないからといって、否定するのはおかしい。コペルニクスの話(地動説)は少数説でしたが正解だった。グーテンベルク・リヒター法則も、ひとつの考え方として危機感をもって見ていかないといけない。FM電波を使う予測や、GPSを用いた予測法なども公式採用はしていないが、リスクという面においては考慮していかなくてはならない重要な問題です。地震を研究する学問はまだ発展途上で、多数説と複数の少数説のどれが正しいのかは、まだ明らかになっていません」

 とはいえ、手をこまねいているわけではない。 実は大津波の被害を軽減するため、確実に一助となるであろう“新兵器”がすでに実戦配備されている。村井委員長が77億円もの国家予算をつけた「日本海溝海底地震津波観測網」。いわば、津波即時予測システムである。「11年の補正予算で、房総沖と三陸沖北部へ設置しました。東日本大震災の震源域に隣接しているこの地域で、今後、大きな地震が誘発される恐れがあるためです。地震計と津波計を装備したケーブル式海底観測装置を直接、震源のすぐ近くに設置することで格段に精度とスピードは上がります。たとえば200㎞沖が震源だった場合、現行の緊急地震速報よりも最大30秒程度、早い測定が可能になります。津波だと10分~20分程度早く警報が出せるようになるのです」 稼げる時間は震源地と設置場所の位置関係によって違うというが、10分あれば、かなりの距離を稼げるだろう。

 他に我々が国民レベルで、できることはあるだろうか。「首都直下でいえば、震源地ごと18パターンのどれかには当たるのだから、どのような被害が起こるかは想定可能。誰をどこに避難させるか、どこに救助を出すかを予め想定できるんです。災害対策法を見直す必要もあるでしょう。現行法では、国と連携して救済に動けるのは指定公共機関だけ。東日本大震災の時、ガソリンの供給が止まってしまったのは、そのためです。東日本大震災では『被災者台帳』を作ってなかった。これも反省せねばなりません。誰がどこに避難したのか分からなかったから、支援物資を必要な箇所に届けられなかった。広域避難というのも実はできていなくて、例えば東京が直撃を受けた場合、埼玉や千葉など近隣エリアへの避難、住居の借り上げを含めて避難するような広域非難のシステムを作っていかなきゃならない。被害シミュレーションと災害緊急法制の見直しを今、進めています。スピードアップに努めたい」 日本に住む限り、地震のリスクからは逃れられない。まずはその現実を受け入れ、危機に備えるしかないのだ。


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